大阪高等裁判所 昭和38年(ツ)45号 判決 1963年6月27日
上告人 池田雅一郎
右訴訟代理人弁護士 中務平吉
被上告人 石丸惣蔵
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中務平吉の上告理由は別紙のとおりである。
上告理由第一点について。
民法第一〇八条は或る者が一面相手方を代理し、一面自己の資格で自己と相手方との契約を締結し、或いは契約当事者双方の代理人となり契約を締結することを原則として禁止したものであつて、或る者が相手方からその代理人を選任する権限を与えられた場合に直接関するものではなく、ただこのような権限授与が相手方の窮迫に乗じたものである場合には、公序良俗に違反するものとして、無効と解すべきである。従つて原審が当事者の一方の代理人がその相手方の代理人を選任する行為自体は単独行為であつて、直接には民法第一〇八条に該当しないと判示したのは正当であり、且つ上告人の大阪日産に対する和解調書作成のための代理人選任の委託が公序良俗に反しないとの原判決の認定は当裁判所の是認するところであるから、原判決には所論のような違法なく論旨は採用しない。
上告理由第二点について。
仮りに上告人と大阪日産との間に大阪簡易裁判所を本件和解の管轄裁判所とする合意がなされなかつたとしても、本件和解調書を無効とすべきものではなく、論旨は採用できない。
すると本件上告は理由がないから、これを棄却すべきものとし民事訴訟法第四〇一条、第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判長判事 岩口守夫 判事 藤原啓一郎 岡部重信)
<以下省略>